永遠のソールライターを見て

diary

一枚のポストカード数年前、東京のアートショップで見つけpostcard。それが『ソールライター』だった。

数年前手に取ったポストカード

小さい頃から、美術館に行くのが好きで、なるべく気になったものには行っている。
ファッションの仕事をしていたので、なおさらデザインや色彩、物づくりをする人たちには興味がある。

数年前、東京で違う展示を見にいった際、ショップにて見つけた一枚のポストカードがあった。
これは絵だろうか??何だろうか?と不思議に思っていたものがあった。
色との陰影がとても美しくて気に入ったので、ここに来た記念とは全く関係がなかったけれど、その時に買って帰った。

カードには、『saulleiter 』と書かれていた。
ソールライターを知るきっかけだった。
それは写真だった。
その時なぜ、その一枚にピンときたかが、今回美術館に見に行ってなんとなくわかった。

絵はよく見に行くけれど、写真となるといつも技術的な難しさとかわからないので、たまに見に行ってもこの分野は「へぇー」と思うばかり。
それでもソールライターの写真は、色彩が綺麗なものもあり、ニューヨークの人々の普段の様子が伺えるような、そんな雰囲気がしていたので興味が増したのかもしれない。

今度、ソールライターの写真展『ニューヨークの写真家 永遠のソール・ライター」が福岡市美術館であると知りとても嬉しかった。
5年越しのソールライターについて知れるチャンス、とてもとても楽しみにしていた。

福岡市美術館

Saul Leiter(ソール・ライター)
12歳の頃に母親に買ってもらったカメラで撮り始め、最初は絵を描いていたものの、ライターの写真に興味を持ってくれたアートディレクターのおかげで、ファッション雑誌「ハーパーズ・バザー」など写真家として活躍するようになる。NY5番街にアトリエを持ち活動するも、1981年に閉鎖。イーストヴィレッジのアパートで自分の撮影をするためだけの生活に移るも

1940年代後半から1950年代にかけて撮影されたカラー作品が写真感材メーカーの補助金によって印刷され、ついに2006年、ドイツのシュタイデル社から『EarlyColor』が出版されると大きな反響が起こる。80歳を越えていたが圧倒的な存在感を示した。

美術館の展示には、モノクロからカラーフィルムまで、静かに整然と沢山の写真が展示されていた。
ライターの理解者だった妹エボラをモデルにした写真、晩年まで一緒に過ごしたモデルのバーンズ・ソーリーとの親密な写真も沢山出展されていた。
対象となるものではなく、ソールライターの身近な人達やライター自身の自分写真など見ることができた。ただ全てが常にカメラレンジ越しであり、本当の姿はどこにも見えないような気もした。

けれど、レンズ越しの世界が全てなのかもしれない。

今回の展示で気に入った一枚は、ピンク色の傘の写真だった。

深みのあるピンク色の傘。傘の上の部分だけだか、どこか明るさも感じられるような写真。

今からどこかお気に入りの傘をさして素敵な場所に行くんじゃないだろうか・・??

写真展入り口に飾られたポスター
唯一撮影がOKだったラーターの私物(自作の絵、時計、ミラー、キャンバス、椅子)また左側バーンズ・ソーリーの絵も

ソールライターの写真は、はっきりした色彩とくもりがかったような視線の切り取り方のコンストラクトが格好いい。
どこかの隙間から視線を送り、人々の隙間を俯瞰して見ているようだ。

人が目で見る目線の面白さ、切り取り方によって見える情景、日常のすぐそばにある景色が、ライターにとって撮るものであるよう感じさせられる。

私もニューヨークに行った時には、その辺に無造作に捨てられているゴミでさえ切り取れそうな気がした。そこには誰かが居て、生活の足跡が残っているような・・

カレンダーとメモノート

ソールライターは、元々は絵をかいていたこともあって、色彩センスや、構図の取り方にも優れている。
私が、最初に絵なのかな?と戸惑った理由がそれで分かった。
絵では出せないリアリズム、写真とは思えない色とぼかしの印影・・
またファッション雑誌の写真も撮っていたので、感覚の鋭い視線と洗練さにハッとさせられたんだと感じた。
思わずにやりとしてしまう格好良さ・・。

帰り際、グッズ売り場にはお気に入りのピンクの傘写真がプリントされたファイルやメモノートを発見。図録を買うつもりだったが、日常で、ライターの視線を楽しみたいと思い写真が載ったカレンダーを購入した。

写真展の展示の途中にあった映像コーナー。
スクリーン一杯にライターの写真が、「カシャ」「カシャ」というシャッター音に合わせて、次の写真に切り替わるのをずっと見ていた。
その音がずっと耳に残っている・・・。

福岡市美術館
福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
9:30-17:30(※入館は閉館の30分前まで)(7~10月の金・土曜日は20:00まで
休館日 月曜日

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